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コラム |
遠く南国の台湾から韓国の混ぜ混ぜ文化を思ってみる |
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2008-07-22 |
活気がある首都・台北の街は自動車やオートバイが猛スピードで道路を駆け抜けていく。自動車の列の渋滞は学生時代に行ったバンコクの街を思い出させたし、人よりも自動車が優先な社会、夜市の賑やかさや台湾政治と台湾経済の厳しい現状は韓国を思い起こさせた。正式には中華民国政府の国旗、今は台湾の国旗になっているけれど、台湾の国中至る所で翻る「青天白日旗」を見ながら、私の記憶は遠く台北の地から8月に行ったソウルに飛んでいた。ソウルの中心地・明洞(ミョンドン)の一等地に台湾(中華民国)大使館が嘗てはあったのだが、92年に韓国が中国(中華人民共和国)と国交を樹立すると、即時に台湾の中華民国政府とは断交になった。青天白日旗が翻っていた台湾(中華民国)大使館は五星紅旗が翻る中国(中華人民共和国)大使館にとって代わられてしまい、今ではその中国大使館も別の場所に引越しをして、今や完全な廃墟と化している。旧大使館の周囲に台湾(中華民国)系の華僑事務所や中華料理店が残っていて、名残を残している感じとでも言おうか。台北では中正紀念堂にも行ったが、そこは中国大陸から台湾に「都落ち」してやって来た独裁者の蒋介石を称えた建物でもある。彼の坐像が堂々と鎮座し、館内には各国政府から彼に贈られた勲章やアメリカ製の彼の超高級な愛用車、それに蒋介石本人が結婚式に着用した正装のモーニングコートまで展示してあった。各国政府から贈られた勲章の中には、台湾と共に「反共産主義の盟友」でもあった韓国政府が蒋介石に贈った勲章もちゃんと展示されていた。独裁者の偉業を称える展示品の数々は、まるで平壌に住んでいるでっぷり腹の独裁者親子を思い起こさせて、あんまり気持ちの良いものではなかったけれど、観光名所だから致し方ない。
8月に行った韓国で、私は貴重な経験をした。韓国人が愛して止まないジャージャー麺を初めて食したのである。夏の暑さ厳しい8月の中旬、私はソウルから高速バスに乗って大邱(テグ)に住むメール友達に会いに行った。名刹・海印寺(へインサ)をその彼と訪ね、大邱の繁華街で夕食を・・と相成った。暑い最中に鍋をつつくのも躊躇するし、かと言ってジャンクフードは味気ない事この上ない。彼と繁華街を彷徨っているうちに、一軒のうら寂れた中華料理店を見つけた。彼とのメールの中で私が「韓国人が愛して止まないジャージャー麺とやらを食べてみたい」と言っていたのを彼が思い出したのだ。早速入ってみる。やる気のなさげな男主人がホールの片隅で新聞を読みながら、奥さんとおぼしきマダムが厨房を仕切っている。注文を取りに来た主人に彼は「ジャージャー麺を2つ」と頼んだ。暫くしてジャージャー麺がやって来た。付け合せに生玉葱と沢庵に黒味噌も一緒に。「よく混ぜて食べて下さい」とは彼のアドバイス。初めて観た韓国のジャージャー麺はよく言えば「ブラックなミートソース」とでも言うべきか。
早速割り箸を両手に持って、一生懸命にかき混ぜる。ビビンパプといい、ジャージャー麺といい、韓国は「混ぜ混ぜ文化だな」と改めて思う。辛くはないけれど、黒味噌がイイ味を出している。私は胡瓜が嫌いなので、かき混ぜる前に一番上に乗っているそれをどかしてから食べる。・・気が付けば口の周りが真っ黒になっていた。口の周りを汚しながら至福に浸るのがジャージャー麺の楽しみのようである。
ここで文献を借りてみる。韓国では「泣く子と地頭に勝てる」のがジャージャー麺であり、泣いている子もこれを食べさせれば黙るそうな。さらに「コッペギ」(大盛り)という言葉もあり、「コッペギ」=ジャージャー麺大盛りという法則は自明の理であるという。さも面倒臭そうに「コッペギ」と頼みながら、内心では今や遅しとその登場を待っているという二面性。江戸っ子の粋ではないけれど、落語を寄席で聴いた後に、昼間から日本酒をちびりちびりとやりながら、天麩羅なり蕎麦なりが来るのを待っているような・・・一種のダンディズムみたいなものを感じるのは、はたまた私だけであろうか??(笑)
韓国にも華僑は居て、その95%が中国の山東省からの移民であると言われている。ビールが有名な青島(チンタオ)がある地域だ。ジャージャー麺は元来、その地方の料理だったそうだが、韓国に来て進化を遂げたのがジャージャー麺なのだそうだ。日本のカレーライスはインドからイギリス経由で日本に定着した。それと似たようなものなのかもしれぬ。
ジャージャー麺を食べる韓国人は、私から見ると実に幸せそうに見える。一心不乱にかき混ぜる姿もそうだが、食べている至福の顔は「韓国人で良かった」というような顔をしているようだった。私の友人もやっぱりそうだった。(笑)子供心に戻れるというのか、或いはお手軽感がそうさせているのかもしれないけれど、私にはよく分からない。韓国人ではないから。(笑)
大皿に盛られた料理を豪快に食べるのは台湾も韓国も変わりない。ただ何事においてもキレイに盛られた料理を混ぜ混ぜするのは、韓国人くらいだろう。それに関しては台湾人も日本人も中国人も遥か遠く及ばないのでないかと私は思う。
台湾ビールを飲みながら、豚の角煮やら小包子やら点心の数々を食しながら、各国の料理の比較をちょっと考えたりした台北の夜であった。台北在住の友人にも会う事が出来たし、ちょっとした「台北のナイトライフ」をも満喫出来た忘れ難い思い出の旅にもなったのである。
最後に付け加えておくけれど、韓国の中華料理屋には「ちゃんぽん」というメニューがある。福岡に暮らす私には「ちゃんぽん」と聞くと、どうしても白濁したスープの長崎のちゃんぽんを思い出してしまう。せっかくなので、翌日のランチに韓国式ちゃんぽんを食してみたが・・・辛い。実に辛い。辛さが半端ではない。「お残しはダメよ」という母親の薫陶を受けて育ってきた私であるが、とうとう母親の教えを破って、結局は韓国式ちゃんぽんを残してしまった。・・初体験の私には、それを半分食べるのがやっとであった。
ちなみに日本でもジャージャー麺は食べられる。・・が、韓国のそれとはちょっと違うようだ。あまつさえ違うのに、私は韓国のスーパーでジャージャー麺のレトルトを買って来て、パスタにかけて食しているが、でもやっぱり違う。あのけだるそうな店の主人と香ばしい黒味噌の匂いがなければ、到底あの雰囲気には追いつけそうもなさそうに私は思えるのだ。帰国する日、さびれてしまった旧台湾大使館の前に店を開く中華料理屋で独りジャージャー麺を食してみたが、やっぱり美味かった。・・・今となっては混ぜ混ぜする韓国のあのブラックなミートソースが懐かしい限りではあるけれど。
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