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孝子洞の理髪師
閣下と国家というのがすべての論理の上に君臨して支配したその時。
反共イデオロギーというのが国民の目を覆って、すべての不正腐敗と非理を希薄にしてしまったその時。その時代の父や母の姿はどうだったのだろうか…。
通常の激変の時代がそうであるように、それらは平安で安定するように、まことに平凡な生き方がしたかった私たちの父と母の素朴な願えさえそっとして置かなかった。
"国は、利口なやつらが巻いて食べる"という映画の中のパク大統領の言葉のように、どの時代のどの国でも国家的な危機での犠牲はいつもその利口なやつらではない人々に押し付けられる。
大韓民国のどこでも70〜80年代の混乱の時期を経験しない所があるかと思うが、青瓦台(大統領府)があるここ孝子洞は、その格別な地理的位置のお陰で激動の歴史をいきいきと体験した所ではないだろうか!そんな孝子洞で理髪師をするソン・ハンモ(ソン・ガンホ)は、ただの平凡な小市民にすぎなかった。
そんな彼が青瓦台の理髪師として働くようになり、平安に暮したい彼の生に暗雲が垂れ下る。職業としての理髪師の生ではない、一つの家族の父親としての生をもっと重みをもたせ、時代の辛さよりはそれによって派生した家族の辛さにもっと胸を痛める父親の姿と、4.19革命、5.16クーデタなどの激変期時代を経験しなければならなかった大韓民国の姿を見せてくれる。
事件は北から越えて来たキム・シンジョ一党の青瓦台襲撃未遂事件に続く下痢病で始まる。キム・シンジョ一党が下痢病で苦労したという知らせがあった後、誰でも下痢をする人はスパイとして責め立てたのだ。
ここで下痢は、スパイなのかないのかを決定する重要な媒介体だ。ひどい無理強いに違いないが、あいにくにもソン・ハンモの息子ナッカンが下痢をするようになって映画は本格的な感動の物語を始めるのだが、なんだか感情投入できないのは急に劇場に行った私の集中力不足のせいだけではないようだ。
この映画の主人公は名前だけ聞いても頼もしいソン・ガンホ、ムン・ソリだ。重くて歪んだ歴史の中にほうり出されたまま、自分の意志どおり生きて行くことができずに自分の家族を守るために鬱憤と犠牲を忍耐して行かなければならなかったその時代の父親の姿を見せてくれたソン・ガンホの演技は、やはりこの映画で断然引き立つ。また彼の横で妻役を演技したムン・ソリの演技も、自然に映画の中にとけている。
やはり大韓民国最高の男女俳優たちであり、この映画で一番気に入る部分ではないかと思う。今や映画は歴史自体だけではない、その中で暮さなければならなかった個人の姿に注目する。
映画よりもっと映画みたいな普通ではない歴史を持った大韓民国。青瓦台の理髪師ソン・ハンモの一代記は、わずか25年前のことだったということと供に、これ以上国家という名前の権力の前に理由なく犠牲にされる事があってはいけないという事を語っているようだ。
<孝子洞の理髪師>は、イム・チャンサン監督のデビュー作だ。不足がちな説得力と味のある劇の展開がもどかしくはあるが、新人監督なのを考えるなら、これから彼が見せてくれる次の映画が何なのか期待したくなる。
また今や表面的で平面的で消極的なキャラクターを飛び越えて、不正腐敗と非理に対抗するもう少し積極的で進取的なその時代のキャラクターたちに映画の中で会える日が遠くないことを私は期待する。





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